宝 珠Column

2025.06.25

エンデに見た仏教感

ミヒャエル・エンデはドイツの児童文学作家です。その代表作である『モモ』に出てくる「灰色の男」の話です。

理髪屋の店主は、店の評判も良く、お金もそれなりに余裕があり幸せに生きていました。しかしある時、「おれの人生はいったい何なのか。生きていて何になった?死んだら初めからいなかったかのように、人に忘れ去られてしまうんだ。」と、ふと思います。

そこに灰色の男がやって来て言います。「あなたは人生を浪費しています。もし、ちゃんとした暮らしをする時間のゆとりがあったら、もっと違う人間になっていたでしょう。あなたに必要なのは時間です。」そう言って、無駄な時間を倹約して我々の時間貯蓄銀行に預けることを勧めるのです。

現在の私たちも、昔なら多くの時間を使わなければならなかった家事や仕事が、簡単にこなせるようになっています。昔の人々よりも今のほうが時間にゆとりがあるはずです。しかし現実は、仕事が増え、休みが少なく、明らかにせっかちな世の中になりました。

般若心経の中に「諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減」とあります。

この考えを時間の考え方に当てはめると、時間は生まれない、無くならない、汚くも無く清らかでも無い、増えもしないし減りもしない、ということです。

時間を倹約して時間貯蓄銀行に預けたけれど、実は灰色の男に時間を盗まれていて、店主はかえって貧しくなった、という話です。